2011/10/22

「池上遊覧鉄道」展が終わりました


「池上遊覧鉄道」
2011年度アサヒ・アート・フェスティバル参加事業  Artlink2011日々是好日

会場:岡山県総社市門田491 池上秦川邸
会期:2011108日(土)~1016日(日) 11時~18

 池上秦川とは、江戸末期に大分県日田の広瀬淡窓がひらいた咸宜園で学び、帰郷後浅尾藩の薪田大名(旗本)の蔵元の就き藩校集義館の文学教授となり、明治維新後は、「大日本租税誌」の編纂に関わった人物。文学と経済学の視点から地域振興を行った池上秦川の邸宅(総社市門田)が展示の会場です。雨水を飲みにヤマバトが飛来!

この展覧会では、二人のアーティスト:伊達伸明と岡田毅志により、池上家の中を架空の路線が走りました。座敷やお茶室。庭の小川や鴨居の額縁。南北神線はなんと家屋を飛び出し、隠岐の西ノ島まで。その車窓の風景は、池上家の歴史や大切にしていたものの気配や他地域との繋がりというように、時空を超えた世界が広がっていました。




そして、実際に会場内の駅舎に配置してあるスタンプを押しながら巡ることもできました。鉄道の車窓風景を手繰りながら、家の中を回っていきます。上の写真は、名勝「宗ノ川」。

近所の方は、「ここで七五三のお祝いをした」「疎開中にここでお茶を習った」「ここの庭で遊んでよく叱られた」「お祖母さんが優しかった」などと、思い出を話しながら歩きます。


実は2010年の春、池上家の人たちと家族の歴史について記憶を遡りつつ語らいました。お婆さんの寝物語、お祖父さんと焼いた茶碗、家族旅行の写真。自分の五感を通して感じる時間の尊さ。
あふれるほどの情報に囲まれて生きている私たちは、その状況に慣れることと引き換えに、感じる時間や自分自身の感覚に基づいて考えることを失いつつあるのではないか。 “利便性をもたらす科学技術の進化と人の内面の進化のバランスの崩れが招いた現代社会の歪”や“ともすると薄れている人と人との関係性”の改善のヒントが、個を超えた記憶の振り返りを行うことで得られるように感じられる。これは人の内面の進化が目指す明るい未来(ピーター・ラッセル氏が提唱するWhite Hole In Time)に向けての小さな一歩となるかも知れないと。



宗ノ茶会:108日(土)15日(土) 宗ノ作(故池上春雄さん創作)のお抹茶碗でお茶を振る舞いました。甘味は、地域に伝わる備中白小豆のぜんざい。近所のお母さんたちは「ぜんざいっておめでたいときによばれるものよね~」と喜んで下さいました。


池上会議:109日(日)
「家族の歴史と地域再生~私事とpublicの交差が生み出すもの~」

家の歴史、個人の好きな物や事を追及して行くと、それは公共にも通じるのではないか!?


つい先月まで、富士フィルムに在籍していた当主の池上眞平さんが話します。「それぞれが全く違ったバックボーンで生きてきているが、共鳴するものを感じると。皆さんに家を使って頂いて、家に命が蘇ったような感じがする。
以前、ア―ヴィン・ラズロの話を聞いたことを思い出した。
視点を変えると、家の過去のものが新鮮に見えてくる。先祖の人達が残したものを掘り起こしてくれてありがたいな。親戚の人にも見て頂きたいなと思います。」

芹沢高志さん
「もともと建築に関わって来ていて、都市計画的な興味から大分県別府に入り込み、美術展をしていきながら地元の壊れ行く建物と現代美術の関係を探っています。鉄道ということで、既存の繋がりを新しい視線で見せることをしているのがいい。」(ちょっとべた褒め!)「池上さんがラズロのことを持ちだしたけれど、僕がかつて研究して編集するときにラズロの本に行きあたったんです。また、これはくっつくなぁ~!」


松浦道仁さん(島根県隠岐諸島の西ノ島にある焼火神社宮司)
「自分の仕事が公の場に出ることにちょっと驚いたんです。なんだか自分個人の取っておきたいようなことが、作品に通じるところに興味がある。」
トークの後は、総社の街のガイドをしている浅野さんに近隣ツアーにご同行していただきました。


最終日は、近所の総社宮の秋祭りでした。

明るい陽光にあふれ、古くから国のまほろばとして栄えてきた吉備の総社で展覧会を開催できましたことを大変嬉しく感じています。本展示を通して、文化の魅力と人々の息づかい、そして新たな出会いが生まれました。関係者の皆様、本当にありがとうございました。